Mark Parker,President and CEO of Nike, Inc. |
300億ドルを超える規模に到達しながら成長を持続できたのはNIKEiDで新R&Dシステムを完成し、DTC(直販)育成で卸販売を置き換えてきたことが大きく寄与した。NIKEiD はすでにathlete signatureを部分的に置き換える新システムに成長した。一方DTC規模は79億ドル(前期比25%増)に達し、ブランド売上の30%に近づきつつある。DTCはコンシューマーの反応を直接把握可能で、そのうえ為替レート変動リスクを回避できる。しかも利益率が高いからコストアップも吸収できる一石三鳥のシステムなのである。
今期は発展途上地域を除いて全地域が売上増加になったが、これまでNike成長を牽引してきた北米市場と西ヨーロッパ市場成長はブレーキがかかった。北米市場スローダウンはバスケットシューズ低迷が引き金になった。最大の販売先フットロッカーがバスケットシューズ販売低迷を明らかにしているから緊急の立て直しが必要になるだろう。
Nike Signature Athletes for Basketball Shoes |
ヨーロッパ市場成長鈍化はadidasの復調が直接原因であるが、Retro Trainerブームの終焉が背景にある。Nikeはadidas攻勢の主要戦場として、西ヨーロッパ市場に過去数年間徹底した攻勢をかけてきた。しかしついにサッカーで主導権を把握することはできなかった。過去3年間ブームだったRetro Trainerでもadidasの反撃に直面している。
成長が加速して前期より好調だったのは中華圏と日本で、両地域とも経済低迷にもかかわらず売上は二桁増だった。中国経済の先行きを考えるとアジア市場は楽観をゆるさないが、日中の2大消費市場にインドも含めると、今後のNike成長でアジアがキャスティングボードを握る可能性はさらに高まった。
LeBron James,Cleveland Cavaliers, signature for Nike LeBron brand |
カテゴリー別売上はバスケットが大幅な成長スローダウンに見舞われた。これは一時的な低迷ではなく、構造的なカテゴリー不振と考えるべきである。このまま放置すれば、1998年に始まった悪夢の10年の再現になる可能性がある。6月にグローバルバスケットカテゴリーGMを更迭したのは事態の深刻さを物語っている。40億ドルを超えるカテゴリーは、いったんモメンタムを喪失すれば、10年という立て直し期間が必要となるのである。
Nike業績は表面的には好調を持続しているように見える。しかしgeographicalな販売構造激変、バスケットカテゴリーの急激なスローダウン、リーディングカテゴリー不在などの課題がクリアになってきた。Nikeは激動の時代に突入し始めたのである。
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